昨日に引き続き、福島からの投稿です。

 

こちら、沿岸部ではないので、他の地域にいるのと同じような感覚になることがありますが、それでも当たり前に『除染中』という立て看板があったりすると、一気に現実に戻されるときがあります。

 

福島からの非難した子どもたちがいじめにあっているというニュースを見るだけでとても心が痛みます。

 

まだまだ復興できていない地域が残っていることなど感じる瞬間です。

 

 

さて今日は昨日に引き続き、福島出身の医師、野口英世の母シカの手紙のお話。

 

これは、志願理由書を指導する際、「文章を書くということはどういうことか」ということを伝えるために使うテキストでもあります。

 

学問がなく、文字を書けなかった母シカが、暖炉の炭を指でなぞって猛練習をして、息子である英世に対して「一目会いたい」という思いをしたためた手紙であります。

 

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おまイの。しせ(出世)にわ。みなたまけ(驚ろき)ました。わたくしもよろこんでをりまする。
なかた(中田)のかんのんさまに。さまにねん(毎年)。よこもり(夜篭り)を。いたしました。
べん京なぼでも(勉強いくらしても)。きりかない。
いぼし。ほわ(烏帽子=近所の地名 には)こまりおりますか。
おまいか。きたならば。もしわけ(申し訳)かてきましよ。
はるになるト。みなほかいド(北海道)に。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。
ドか(どうか)はやく。きてくだされ。
かねを。もろた。こトたれにこきかせません。それをきかせるトみなのれて(飲まれて)。しまいます。
はやくきてくたされ。はやくきてくたされはやくきてくたされ。はやくきてくたされ。
いしよ(一生)のたのみて。ありまする。
にし(西)さむいてわ。おかみ(拝み)。ひかしさむいてわおかみ。しております。
きた(北)さむいてはおかみおります。みなみ(南)たむいてわおかんておりまする。
ついたち(一日)にわしおたち(塩絶ち)をしております。
ゐ少さま(栄昌様=修験道の僧侶の名前)に。ついたちにわおかんてもろておりまする。
なにおわすれても。これわすれません。
さしん(写真)おみるト。いただいておりまする。はやくきてくたされ。いつくるトおせて(教えて)くたされ。

これのへんちちまちて(返事を待って)をりまする。ねてもねむれません。

 

 

お前の出世にはみんな驚きました。私も喜んでおります。
中田の観音様に毎年、夜篭りをいたしました。
勉強をいくらしてもきりがありません。
鳥帽子という村からのお金の催促には困ってしまいます。
お前が戻ってきたら申し訳ができましょう。
春になるとみんな北海道に行ってしまいます。
私も心細くなります。
どうか早く帰ってきて下さい。
お金を送ってもらったことは誰にも聞かせません。
それを聞かせると、みんな呑まれてしまいます。
早く帰って来て下さい。早く帰って来て下さい。早く帰って来て下さい。早く帰って来て下さい。一生の頼みであります。
西に向いては拝み、東に向いては拝んでおります。
北に向いては拝んでおります。

南に向いては拝んでおります。
ついたちには塩断ちをしております。
栄昌様についたちには、拝んでもらってます。
何を忘れてもこれは忘れません。
写真を見ると拝んでいます。
早く帰って来て下さい。
いつ帰れるか教えて下さい。
この返事を待っています。寝ても眠れません。

 

シカの手紙を通じて、授業で伝えることは、テクニックや小手先でまとめた文章ではなく、シカのように、伝えたい思いがなければいい文章は書けないし、その思いが何かを書くときには最も大切であるということ。

 

これから思いを文章にする練習をもっともっと増やしていく桜塾の国語指導において、このシカの手紙はこれかも最初に紹介していきたいと思いますね。